TRONキーボード製作のあれこれ

この記事は、キーボード #1 Advent Calendar 2020の10日目です。TRONキーボード製作した話のつもりで書き出してみたら、TRONキーボードの歴史・仕様についてのサーベイが中心の記事になりました。
9日目は、marksardさんのアルミトレイケースの不快な音を除去して「整音化」するでした。
10日目は、サリチル酸さんの削り出しに挑戦した話です。

12月は、クリスマスに向けてAdvent Calendarのシーズンですが、TRONファン界隈ではTRON Symposium -TRONSHOW-の季節でもあります。12/9-11開催中です!

TRONキーボードを製作した経緯

もともと、TRONファンのBTRON(超漢字V)ユーザで、TRONキーボードのデザインが好きだったからということに尽きます。
TRONの坂村研に所属していましたが、研究室にTRONキーボードが何台かはあるけれど、坂村研でもTRONキーボード関連は過去のプロダクトということで、研究室でもTRON配列のキーボードを使うのは少数派でした。
個人的に各種TRONキーボード(TK1、μTRONキーボード、スケルトロン)を収集していましたが、発売からかなり年月が経過してコレクターアイテムになりつつあるので、今後の維持を考えると普段使いし続けるのが困難になりつつありました。壊したら嫌だし。
となると、普段から使えるTRONキーボードが欲しくなってきました。何より、自作キーボードキットでTRONキーボードが出るなら、自分で出してみたかったと言うのもあります。

さらに、天下一キーボードわいわい会#1~#3と参加させて貰って、自分でも自作キーボードキットを作りたい!という気持ちが強くなるだけで無く、TK1やμTRONキーボードといったTRONキーボードを展示しての反応が大きかったので、TRONキーボードを見せたい!という気持ちが大きくなりました。やはり、交流って良いですね。

そもそも、TRONキーボードとは何なのか

ここまで書いてみて気づきましたが、そもそもTRONキーボードを知らない方も多いかと思うので、TRONキーボードとは何なのか書いてみようと思います。
TRONキーボードは、坂村健先生が1984年に始めたTRONプロジェクトの中で、PC向けOSであるBTRON搭載の端末用に、入力効率がいいことと、同時に作業者の疲労が少ないことを重要視しして作られたキーボードです。
TRONプロジェクトでは、「新しい酒は新しい革袋に」と、新たなコンピュータアーキテクチャを作っています。組込OSのITRONからはじまり、CPUのTRON Chip、PC向けOSのBTRON、電話交換機(もう交換機が無いけど…)向けOSのCTRON、データフォーマットのTAD、TRON GUI、TRONキーボードやカメラといった入出力インタフェース、セキュリティチップのeTRON、電子タグ向けのucode、クラウド的概念のMTRON、果ては電脳住宅(試験住宅建設)や電脳ビル・電脳都市(構想止まり)まで検討が広がっています。大風呂敷を広げて実現してこれた、坂村先生ならではのプロジェクトです。色々タイミングが早すぎたこともあったり、シェアについては色々指摘受けるところがあったりということもありますが、小惑星探査機はやぶさ2のOSには組込向けのTRON(T-Kernel)が載っていたりと、縁の下で活躍しています。理想のコンピュータってなんだろう?と考えられるのも、TRONの魅力の一つです。
TRONキーボードは、1986年頃に試作機が製作され、1991年に市販されています。

TK1 「TRONのデザイン30年」 http://30th.tron.org/trondesign.html

TRONキーボード含めた、BTRON端末のデザインの先祖に、坂村先生がTRONプロジェクト開始前の1982年に日本電子工業振興協会(現:電子情報技術産業協会)の「10年後の未来のオフィス」という30分のスライドショー向けに検討された、スーパーパーソナルコンピュータ「ペルセポネ」があります。

未来のオフィス イメージ 「TRONのデザイン30年」 http://30th.tron.org/trondesign.html
高速入力が可能で疲労の少ないキーボード イメージ 「TRONWARE Vol.7」 p35
TRONプロジェクト開始前の1982年に、早くも未来のオフィス想定イメージにおいてキーボードも検討されていた

TRONキーボードの設計においては、初めてされた日本人の手の諸元データの測定から始まり、その解析結果から人間工学的に打ちやすく疲労の少ない物理配置を決定し、多数の文書入力データの分析によりキーの論理配列を決定しています。

可動範囲とキー配列「TRONのデザイン30年」 http://30th.tron.org/trondesign.html

ここら辺は、坂村先生の論文、「BTRONにおける入力方式 -TRONキーボードの設計-」にまとめられているので、参考にしてください。
日本人の手指サイズに合わせているため、TK1含めTRONキーボードでは、キーピッチが16mmピッチと、通常のフルピッチの19mmピッチより狭ピッチになっています。エルゴノミクスキーボードは、意外にフルピッチだと手が届きにくいキーがあったりしますが、TRONキーボードの場合は、そんなことはありません。また、S(14mm)・M(16mm)・L(18mm)と3サイズ規定(市販はMサイズのみ)しているので、自分の手のサイズに合わせたキーボードを選ぶことが出来ます。
さらに、ポインティングデバイスは、手書きに近い操作性を求め、電磁誘導式ペンタブレットを初めて搭載しているのもポイントです。1984年に依頼を受けたワコムが電磁誘導式の電子ペン(ペンタブレット)を開発し、これがワコムのペンタブレットに繋がっています。ワコム、凄い。

ちなみに、TRONキーボード以外のエルゴノミクスキーボードについては、「NISSE」キーボードを開発・販売されているShiki Okasakaさんが、エルゴノミック キーボードの簡単な歴史としてまとめられているので、そちらを参照してください。

TRONキーボードのバリエーション

TRONキーボードには、いくつかバリエーションがあります。代表的な物でも、形状が凄いと有名な「TRONキーボード」、論文やモックアップの写真しか出ていない「TRON最小化キーボード」、静電容量無接点方式の分割キーボードとして有名な「μTRONキーボード」とあります。
さらに、1986年のTRONキーボード試作機以前には、JIS配列に近い長方形のキー配置のモデルや、扇形配置ながら中央にファンクションキーのクラスタを挟んだものも検討されていました。
検討の結果、中途半端なキー物理配列の変更では、キー入力負荷があまり減らなかったため、エルゴノミクス配列にしています。キー数は、届きやすさという意味では、かな入力を満たせれば良いので、せいぜいホームポジション上下までとなるべく少ない方が良いですが、それでは扱える文字・記号や機能キーが足りなくなってしまうので、左右に2列伸ばしていった結果、キー数が72キー程度のTRONキーボードの物理配列になっていったようです。
自作キーボードでは、30%、40%といったキー数が少ないキーボードも流行っていますが、ファンクションキーや押し方で1つのキーに複数文字をマッピングできれば、指の可動範囲内だけで済むこれらのキーボードが流行るのも分かる気がします。

BTRON端末試作機 「TRONのデザイン30年」 http://30th.tron.org/trondesign.html
TRONキーボード搭載のBTRON端末試作機 「TRONWARE Vol.5」 p13
TRONキーボード試作機 「TRONWARE Vol.5」 p13
左側と上部、右側のファンクションキーについては、開発用のコマンドキーのため、
実際の標準キーボードは中央の長方形クラスタのみとのこと。
TRONキーボードを搭載したBTRON端末のイメージ
山中俊治氏がデザインされ、有名なシド・ミード氏のイラストは今見ても格好良い

TRONキーボード

狭義のTRONキーボードも、いくつか試作バージョンがあります。沖電気工業によって1987年頃に試作されたバージョンは、論文や書籍「TRONで変わるコンピュータ」に紹介されているver2.12aのようですが、カーソルキーが追加されたver.3もあります。ver2.12a、ver.3ともに、人差指より内側のキー3列が格子配列で、中指部分のキーが人差指部分のキーから角度が付いています。
ちなみに、このバージョンの図面は、立花貞夫、坂村健「TRONキーボードの実装について」『TRONプロジェクト ’87-’88』の論文に掲載されているので、興味があったら読んでみてください。

Photo by Yoshiyuki Oguma, CC BY 3.0 https://creativecommons.org/licenses/by/3.0, via Wikimedia Commons

それが、1991年に発売されたTK1ではver4.0となり、写真のように中指より内側のキー4列が格子配列になっています。見比べてみると結構違うもんです。
TK1の製造は沖電気工業、販売はパーソナルメディア(BTRON含めたTRON関係のソフトメーカ)です。
キースイッチは、ALPSの白軸(型番不明、形状SKCLに近い)です。
キーキャップは、シリンドリカル・ステップスカルプチャ+特殊形状で6種(親指部分、十字キー、1~4段目)です。
キーキャップは、試作機(ver2.12a)ではコンケイブで2種(通常キー+親指部分)、上面サイズは12×11.5mmでしたが、TK1ではシリンドリカル・ステップスカルプチャ+特殊形状の6種になって上面サイズが12x11mmになっています。一般的なキーボードのキーキャップと比べると、指が触れる部分もかなり小さめです。
TK1の図面は、TK1付属品のTRONキーボード仕様書に載っているので、スケルトロンやTL Split Keyboardはその仕様に準拠しています。

TRONキーボード TK1(1991年発売)

TK1は、1991年に発売されましたが、10万円という価格、BTRONで使うことを前提とされていたこともあり、今ではBTRONユーザがコレクション的に保有しているのみになっています。BTRON仕様のキーボード接続規格になっているため、PCに接続しても、PS/2キーボードとして使うことはできません。BTRONファンの友人がUSBキーボード化するアダプタを製作していますが、基本的にはBTRON仕様OSの超漢字Vからしか使えません。
実は、ファームウェアをBTRON用とPC98用に切替えられて、PC98キーボード+シリアルマウスとしても動作します。ただ、PC98も廃れてしまったので、なかなか普通に使うのが難しい状況です。
※自分の場合は、PC98ファームが入ったジャンクTK1を入手できたので、同人ハードのPC98キーボード⇒USB HIDキーボードアダプタを使って、USBキーボードとして使っています。

後述するスケルトロンや、当方のTL Split Keyboardは、TRONキーボードの物理配列になっています。

スケルトロン ST-2000

スケルトロン ST-2000は、公式なTRONキーボードではありませんが、TRONキーボード仕様に準拠したキーボードなので紹介します。

スケルトロン ST-2000
保管状況のせいか、外観はだいぶいまいち…。

スケルトロン ST-2000は、たのみこむというユーザが実現したい新商品を投稿して一定数賛同が得られると実現を目指すというサイトで、作られた唯一のキーボードです。たのみこむでは、ハードの企画・実現がされていたので、ある意味GB(Group Buy)の先駆けかもしれません。たのみこむはメーカーでないので、基板含め(株)エルコムで設計され、筐体は(株)ムラカミで製作されています。ボディは試作品をベースに金型が製作されており、中国で製造されています。
キースイッチはCherry ML、キーキャップはノートPCでよくある平形形状で2種類(親指部分と通常キー)です。

たのみこむロゴ

2000年にたのみこむで提案され、『TRON仕様に準拠したキーボード』として115000円で事前購入者募集され、2001年8月に申込者のところに発送されています。

キーボードメーカが作った訳ではないので、物理配列やケース形状は頑張っていますが、あまり品質は高くなかったという評価です。キースイッチのCherry MLもへたりやすいため、自分が所有しているスケルトロンも常用には耐えられないコンディションになっています。

TRON最小化キーボード

TRON最小化キーボードは、自作キーボードでも流行っているハの字型キーボードに近い物理配列で、ノートPCのように狭いサイズでも、指の動く範囲になるよう配置されています。

TRON最小化キーボード搭載のμBTRON端末モックアップ 書籍「TRON Design」 p36

論文での物理配列紹介やモックアップの写真しか出ていないので、殆ど知られていません。

TRON最小化キーボード配列 「BTRONにおける入力方式 -TRONキーボードの設計-」 Fig.3

μTRONキーボード

μTRONキーボードは、1989年に設計されています。この幻のμTRONキーボードをベースに、μTRONキーボードは2007年に発売されています。1989年のデザインで既に17mmピッチとなっており、ノートPCに搭載可能なよう、キーの物理配置はコンパクトになる水平垂直方向として、従来の物理配列に近いキーボードとして設計されたようです。製品版開発時、コンパクトで持ち運べるようにと、分割キーボードになっており、ポインティングデバイスは省かれています。左右でキーキャップが対称になっており、エンターの部分が普通の逆L字ではなくL字型なのが特徴です。
製造はUC Tecnology、販売はパーソナルメディアです。
キースイッチは、製品版開発当時はメンブレンスイッチが主流になっており、TK1で使用したALPS社製メカニカルスイッチが採用できないということで、打鍵感の良いスイッチを検討した結果、東プレの静電容量無接点方式を採用しています。
キーキャップは、シリンドリカル・ステップスカルプチャ+特殊形状で10種類以上(※実機で確認中)です。
発売当時は、東プレの静電容量無接点方式のキースイッチを採用した唯一の分割キーボードで、さらに17mmピッチ、専用のキーキャップとかなりコストがかかった設計のため、市販価格も5万円と高価になり、キーボードマニアの間でも名高いキーボードでしたが、現在は販売終了になっています。なかなか、ニッチな市販キーボードは、継続し販売することが難しく、ユーザとしても入手性が安定しないのが悩みどころです。余談ですが、東プレさんか、PFUさんが分割キーボード出してくれないものか…。
さらに、超高級なモデルとして、ケースが津軽塗りというバージョンも少数作られています。

「TRONのデザイン30年」 http://30th.tron.org/trondesign.html

静電容量無接点方式のキースイッチの打鍵感は、個人的に最高だと思いますが、μTRONキーボードの場合は分割キーボードということもあってか、手の位置は自由になる上に、筐体が小さいおかげかフルキーボードよりしっかり打てる感じがして、とても良いです。ベストなキーボードだと思います。
繰り返しになりますが、東プレさんかPFUさんが、静電容量無接点方式キースイッチを採用した分割キーボード出してくれないものか…。

TRONキーボードのケース形状

TRONキーボードは、ケース形状を立体的配置にしているところもポイントです。
基本的な考え方としては、自然な配置で筋力の一番出るところでキーを打てるよう、ハの字型にして左右も空けて、手前側にアームレストを付けて、傾斜させています。
TK1はもちろんこの傾斜になっていますが、μTRONキーボードもチルトスタンドでこの傾斜にすることができます。

キーボードの立体的配置 「BTRONにおける入力方式 -TRONキーボードの設計-」 Fig.5

TRON配列

せっかくなので、TRONキーボードの論理配列「TRON配列」にも触れておきます。
当時、かな配列としてはJIS配列や親指シフトで有名なOASYS配列がありましたが、新たに理想的なかな配列をめざし、文字の使用頻度を大規模調査をした結果を反映した配列になっています。使用したデータは、ビジネスマン向けの単行本、ビジネスレター、コンピュータのマニュアルで仮名文字数にして約160万字です。
これらを踏まえ、割り当て方針としては、下記の通りです。
1.段の使用頻度は、中段、上段、下段とする。
2.連続した2文字が左右交互に打てるようにする。
3.同じ指を連続して使うことを少なくする。
4.人差し指、中指の使用頻度を高くし、弱い薬指、小指の使用頻度を低くする。

TRONキーボードの論理配列 「BTRONにおける入力方式 -TRONキーボードの設計-」 Fig.6

図のように、各キーにかなが2文字ずつ配置されており、OASYS配列のように左右の↑のシフトキーで入力するようになっています。
英字配列については、QWERTYよりは交互打鍵になるということで、新たな配列を検討せずDvorakが採用されています。

論理配列沼は、キーボード沼の中でも極地で、下手に何か書くと怖そう?なのと、正直かな入力は分からんので、一般的なことしか書けません。
自分は、論理配列沼には足を踏み入れることなく、QWERTYのローマ字入力派です。TRONキーボード好きなら、せめてDvorakのローマ字入力にすべきかもしれませんが、一時期Dvorak入力の練習してみても慣れなかったので、諦めています。

実は、TRONファンの間では自作TRONキーボードは一般的だった

TRONファン界隈では、TRONキーボードを自作するということが、自作キーボードムーブメントの前からかなりありました。TRONキーボードが入手しづらく、高かったこともあったので、欲しいなら自分で作るか…となりやすかったようです。

なんと、キーキャップから金型起こしてうん百万かけて市販キーボード並の手間をかけて製作した、美崎薫さんの「エルゴノミクス・コンパクト・キーボード ZeRO-ONE」(1997)、KAKKO(Y.Kaneko)さんの「猫式トロンキーボード TYPE-01」、Shikiさんの「TRONキーボード 自作1~4号機」(2004-2010)、Tasakiさんの「TRON風キーボード」(2008?)、きもとさんの自作PDAに搭載された「折り畳みキーボード」(2009?)、BTRONファンによるワーキンググループであるTAD-WGによる「TRONキーボード」(2017)、くーまる工房さんによる「オリジナルキーボード」(2018-2019)、「オリジナルキーボード2号機」(2020)、最近だとkmtokiさんの「TRON配列をNISSE風ボディに乗っけた左右分離型の自作キーボード」(2020)などなど、試行錯誤されてきています。
また、μTRONキーボードも、弁当屋Pさんの「Shuriken」があります。

TRONっぽいキーボード欲しさに量産・市販まで達成してしまったキーボードに、「スケルトロンST-2000」キーボード、「NISSE」キーボードがあります。
※Keyboardio The Model 01は、μTRONを参考にしているけど、いったんは保留。

これらの事例を見ていたので、いつかは作るぞTRONキーボードという感じでしたし、自作キーボードムーブメントを知った時は、自分でも作れるようになったかな?と思うようになりました。
自作キーボードムーブメントが2017年くらいまでのTRONキーボード自作事例と違うのは、キーボードコントローラの部分を既存キーボードをばらして流用したり、PICやらでファームウェアから完全自作したりする必要が無くなったのが違います。自分も、坂村研に入る前に学部でヒューマンインタフェースの研究をしていた際、市販キーボードをばらたり、電子工作用キット(当時はPhidget)を使ったりして入力デバイスを作るということやっていましたが、できなくはないけど面倒だよなぁ…という感じでした。何より、ブレッドボードで試作するか、空中配線で頑張るかというレベルでエッチングして基板起こすとかまではしたことが無かったので、今みたいにKiCadでささーっと基板を組んで、ネットで注文すればPCB基板が届くという世の中になったのが凄いです。
自作キーボードキットを出しやすくなり、色んな人の手に届きやすくなったのは、かなりの変化だと思います。

自作TRONキーボード TL Split Keyboard

自作TRONキーボード、「TL Split Keyboard」の製作については、この記事TRONキーボードMサイズ(16mm版)を作った記事にまとめているので参照してください。
TRONキーボードの良いところは、人によって違う手のサイズを考慮して、キーボードにサイズの概念を入れたことにあると思っているので、18mmピッチ(Lサイズ)のバージョンと、16mmピッチ(Mサイズ)のバージョンを製作しています。

TL Split Keyboard 16mm Rev0 + キーキャップ

TRONキーボードの物理配列を実現しているだけでなく、キーキャップもTRONキーボードのデザインをベースに自作しており、シリンドリカル・ステップスカルプチャ+特殊形状で6種類(1~4段目、親指部分、十字キー部分)を、3Dプリンタで製作しています。
良かったら、委託販売させて貰っている遊舎工房さんやboothを見てください。キーキャップも、DMM.makeで製作可能です。遊舎工房さんの店舗には、展示品も置かせてもらっているので、TRONキーボードの配列に触れて貰えるようになっています。

「TRONのデザイン30年」 http://30th.tron.org/trondesign.html

エグゼクティブ用コンピュータのデザイン検討」のキーボードデザインが理想なので、今後はケースも含めブラッシュアップしていきたいと考えています。
また、市販のタブレットを埋め込んだケースも検討しています。

TRONキーボードの良いところは、手のサイズに応じてS(14mm)、M(16mm)、L(18mm)とキーピッチのサイズ違いを考慮したエルゴノミクス配列なので、指が疲れないことに尽きると思います。日本人の手には、一般のキーボードで主流のフルピッチ(19mm)や18mmでは薬指・小指が届きにくいキーが出てきてしまうので、TRONキーボードでなくても狭ピッチ(16mmくらい)がお勧めです。
狭ピッチキーボードいいですよ!

「TL Split Keyboard」を作って良かったことは、TRONキーボードに憧れていた人達に触って貰えただけでなく、TRONキーボードを記事でしか見たことない人や、TRONキーボードを知らない人にも知ってもらえたのが良かったなぁと思います。そう言う意味では、「TL Split Keyboard」を委託販売させて貰っている遊舎工房さんには感謝しきりです。
また、坂村先生にもBTRON ClubというTRONファンの集まりで、TL Split Keyboardを紹介でき、また別の機会に越塚先生にも見て貰えたので良かったです。

天下一キーボードわいわい会で、TK1やμTRONキーボードといったTRONキーボードを展示して反応が大きかったので、「TL Split Keyboard」もイベントで展示したいなぁと思っているのですが、如何せん完成したのが2020/06とコロナ禍で、キーボードイベントも軒並み飛んでしまっているので、なかなかチャンスが無いのが残念です。
※とはいえ、キーボードは手に触れてみてなんぼな物なので、なかなかこういう状況で大人数が参加とかだと心理的にも難しいですが…。

今後のもくろみ

メカニカルキーボードも好きですが、やっぱ静電容量無接点方式のμTRONキーボードの打鍵感は最高だよね!と言うことで、静電容量無接点方式の自作TRONキーボードの製作を進めています。ただ、オリジナルMサイズが16mmピッチでμTRONキーボードでも17mmピッチなのに対し、現状入手可能なパーツで静電容量無接点方式にしようとすると18mmピッチになってしまいそうなので、そこで悩んで進んでいませんが…
(追記)結局、18mmピッチでmicro TL Split Keyboard 18mmとして製作しました。

また、せっかくTRONキーボードを作ったので、マイコンもProMicroではなく、TRONの組込OSであるμT-Kernel3.0で動かして、上から下までTRONなキーボードにしたいところです。μT-Kernelが動いて、安くて小さいボードがなかなか無いので、こっちも悩み中。
※というか、組込プログラミングが苦手という話もあるけれど。

最後に…

TRONキーボードをなんで作ったかという話を書こうと思ったのですが、そもそもTRONキーボードを知らない人も居るのでは?と思って書き出したら、その部分がかなりの分量になってしまいました。
一通りのTRONキーボードの歴史や、試作機含めたデザインを紹介できたので、ネットで得られる情報だけでなく、TRON関係の論文、書籍で得られるTRONキーボードについての情報を網羅的に得られるサーベイ記事にできたと思います。
一人でも、TRONキーボードに興味を持って貰えれば嬉しいです。

この記事は、自作TRONキーボード TL Split Keyboard 16mm Rev0と、オリジナルに敬意を表して若干TK1で書かれました。
TL Split Keyboardは、もうすぐ16mm Rev1を販売予定です。
(追記) TL Split Keyboard 16mm Rev1は、遊舎工房さんとboothで販売中です。

参考文献

坂村健「BTRONにおける入力方式 -TRONキーボードの設計-」、『情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション』、1986年、41号1-8p
TRONフォーラム「TRONプロジェクト30年の歩み TRONのデザイン30年」(http://30th.tron.org/trondesign.html 参照:2020年12月8日)
パーソナルメディア『TRON Design』パーソナルメディア、1999年
パーソナルメディア「特集1:BTRON仕様マシン歴代プロトタイプ」『TRONWARE』 パーソナルメディア、1990年、Vol.5
パーソナルメディア「坂村先生の考える未来のコンピュータ」『TRONWARE』 パーソナルメディア、1991年、Vol.7
美崎薫「TRONキーボード入門 第3回「TRONキーボードの設計思想」」『TRONWARE』 パーソナルメディア、1995年、Vol.34
美崎薫「TRONキーボード入門 第4回「TRONキーボードの設計思想2」」『TRONWARE』 パーソナルメディア、1995年、Vol.35
立花貞夫、坂村健「TRONキーボードの実装について」『TRONプロジェクト ’87-’88』パーソナルメディア、1988年

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